キャッシュ・フロー計算書は、企業の資金の流れを把握するための重要な財務諸表で、損益計算書・貸借対照表に並んで財務3表といわれます。しかし、非上場企業には作成義務がないため、作成していない会社も多いです。
本稿では、キャッシュ・フロー計算書の作成方法や、会計ソフトを活用する方法について解説します。
キャッシュ・フロー計算書とは?
キャッシュ・フロー計算書は、主に以下の3つの活動からなる資金の流れを記録します:
- 営業活動によるキャッシュ・フロー
- 投資活動によるキャッシュ・フロー
- 財務活動によるキャッシュ・フロー
これらの活動を通じて、会社がどのように資金を生み出し、使っているのかを明確にします。
(参考イメージ)トヨタ自動車の2023年3期連結キャッシュ・フロー計算書
営業キャッシュ・フローの計算方法
営業活動によるキャッシュ・フローは、企業の本業から得られる現金の流れを示します。計算方法としては、直接法と間接法の2種類があります。間接法は、当期分の損益計算書と、2期分の貸借対照表があれば自動で作成できるため、一般的な企業会計においては、間接法が採用されます。
直接法
直接法では、現金収入と現金支出を直接的に記録します。例えば、以下の項目が含まれます:
- 売上収入
- 支払った仕入代金
- 支払った給与
- 支払った税金
これらを集計することで、営業活動によるキャッシュ・フローが算出されます。直接法のメリットは、現金の流れを詳細に把握できる点です。ただし、手作業で作成する場合、収集するデータ量が多くなるため手間がかかります。
間接法
間接法では、まず損益計算書の税引後利益をベースにし、そこに非現金費用や資産、負債の調整(運転資本の変動)を調整します。
間接法による営業キャッシュ・フロー算出の例
※以下は代表的な調整項目です。
【調整事項】 | 【調整項目】 | 符号 |
税引前当期純利益 | 税引前当期純利益 | |
非資金費用の調整 | 減価償却費 貸倒引当金の増減額 |
+ +(−) |
営業外損益の調整 | 営業外収益 営業外費用 |
− + |
特別損益の調整 | 特別利益 特別損益 |
− + |
資産、負債の調整 | 売上債権の増減額 棚卸資産の増減額 仕入債務の増減額 |
−(+) −(+) +(−) |
小計 | ||
営業外損益の調整 | 利息の支払額 利息の受取額 |
− + |
特別損益の調整 | 特別利益 特別損失 |
+ − |
法人税等の調整 | 法人税等の支払額 | − |
営業キャッシュ・フロー |
間接法は、損益計算書から直接情報を取得できるため、作成が比較的簡単です。多くの企業が間接法を採用しています。
会計ソフトでのキャッシュ・フロー計算書作成
キャッシュ・フロー計算書をミスなく手作業で作成するのは手間がかかりますが、会計ソフトの標準機能として「キャッシュ・フロー計算書作成機能」がついている場合があります。
マネーフォワードの例
例えば会計ソフト「マネーフォワード」では、キャッシュ・フロー計算書作成機能が標準搭載されています。
出所:マネーフォワード会計管理画面
レポート > キャッシュ・フローレポート
これにより、他の財務諸表との整合性を保ちながら、正確なキャッシュ・フロー計算書をかんたんに作成できます。
まとめ
キャッシュ・フロー計算書は、企業の資金状況を把握するために欠かせない財務諸表です。直接法と間接法のどちらを選ぶかは企業のニーズやリソースに応じて決定されます。また、会計ソフトを活用することで、効率的かつ正確に作成が可能です。