取引のある銀行ではこれ以上借りられない、という場合に、銀行員に他の金融機関を紹介してもらうことに思い当たる方もいるかもしれません。しかし、銀行員サイドは、「◯◯銀行さんに行ってみたらどうですか?」とは言えますが、直接あなたの会社を紹介することはしません。
浮貸し
浮貸しとは
浮貸しとは、金融機関の役職員がその地位を利用し、自己または当該金融機関以外の第三者の利益を図るために、金銭の貸し付け、金銭の貸借の媒介、または債務の保証を行う行為を指します。
出資法第三条
出資法(出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律)の第三条に以下のように規定されています。
(浮貸し等の禁止)
第三条金融機関(銀行、信託会社、保険会社、信用金庫、信用金庫連合会、労働金庫、労働金庫連合会、農林中央金庫、株式会社商工組合中央金庫、株式会社日本政策投資銀行並びに信用協同組合及び農業協同組合、水産業協同組合その他の貯金の受入れを行う組合をいう。)の役員、職員その他の従業者は、その地位を利用し、自己又は当該金融機関以外の第三者の利益を図るため、金銭の貸付け、金銭の貸借の媒介又は債務の保証をしてはならない。
浮貸しで禁止されている行為をわかりやすく
浮貸しの要件は①その地位を利用し②自己又は当該金融機関以外の第三者の利益を図るため③金銭の貸付け、金銭の貸借の媒介又は債務の保証をすることであり、具体的には以下のようなケースが該当します。
- 金銭の貸し付け:銀行員が、自身の資金や顧客から預かったお金を、自行の勘定を通さずに第三者に貸し付ける行為。
例えば大口預金者Aさんから預かったお金を銀行に持ち帰らず、B社に融資するケースが該当します - 金銭の貸借の媒介:銀行員が、融資を希望する顧客に対し、他の金融機関を紹介し、その紹介料として手数料を受け取る行為。ただし、金融機関の業務として他の金融機関を紹介する場合は、浮貸しには該当しません。
例えば、自行では貸せないが、C銀行では貸せるので紹介して借りられるように手伝います。ただし手数料をいただきます、というケースが該当します。※手数料をとらない場合は当該顧客の利益を図ることになり、またいずれにせよC銀行の利益を図ることになります - 債務の保証:銀行員が、正式な手続きを得ずに債務保証をするかのように振る舞い、保証料を受け取る行為。
実際に起きた浮貸しの事例
以下は実際にあった浮貸しでの違反事例です。
事故者は、A支店勤務当時の取引先代表者から、他店舗異動後も相談を受け、A支店への融資の打診や進捗確認などを行い、謝礼を受け取ることもあったところ、取引先が購入した土地の手付金を決済するための資金が不足したため、事故者自ら2000万円を代表者に貸付けておりました。
また、事故者は、他店舗勤務当時に知り合った別のお客様複数に対し、前記代表者への資金繰り協力を求める書類や貸借の際の借用書を作成し、当該お客様から前記代表者への合計2400万円の貸付けの媒介をしておりました。(出典:琉球銀行)
まとめ;銀行員は自分の銀行以外を紹介しない
浮貸しの規制がある以上、銀行員から他金融機関を紹介(媒介)してもらうことは望めません。
他の選択肢を模索した方が懸命と言えます。