循環取引とは、複数の企業が実態を伴わない取引をループさせることで、売上や収益を実際以上に見せかける不正会計(粉飾)の代表的な手口です。
循環取引とは
循環取引の仕組み
循環取引には最低でも2社が関与する必要があります。
- 架空の売上計上
A社がB社に商品を販売する契約を行います。しかし、取引は見せかけであり、商品が実在しなかったり、実在しても在庫が動きません。紙の上だけでの販売契約(発注書などが作られる)です。 - 資金の循環のはじまり
B社は、架空の商品を購入した分の代金をA社に支払います。これは実際に金銭が動きます。これによりA社は売上が計上されますが、原価は計上されず、入金分が粗利として計上されるため利益が水増しされます。また、B社においてはこの購入代金は計上しないか過小に計上します。 - 資金のつじつま合わせの取引
上記では、B社にデメリットしかないため、今度はすぐさまB社がA社に商品を販売する契約を行います。これも見せかけの取引です。A社はB社から入金された金額をそのままB社に支払います。B社は同様に入金額を粗利として計上します。また、A社においてはこの購入代金は計上しないか過小に計上します。
これにより、資金が再移動(いってこい)し、A社もB社もプラスマイナスゼロになりました。 - 架空の利益創出
上記の取引でA社・B社ともに売上(≒粗利)を水増しすることができます
循環取引の目的
循環取引は資金が移動するだけで、それだけ見れば何の意味もない取引になりますが、以下の目的を持って行われることが一般的です。
- 体外的な信用力の向上
取引先や金融機関などのステークホルダーに対して優良な財務状態であることをアピールすることができます。 - 資金調達の容易化
信用を高めて銀行や投資家からの資金調達を円滑にする。
循環取引の発覚
循環取引はなぜ発覚するか
循環取引は以下のように発覚します。
- 外部からの指摘
- 金融機関への頻繁な借入打診;循環取引後の決算書は優良なことが多いため、頻繁な借入を打診されることに疑いを持たれます。
- 金融機関による資金の追跡調査;同一金融機関の口座で頻繁な資金のやり取りがあることで、2社の関係性に疑いを持たれます。
- 内部からの告発
- 実際の営業状況との乖離があり、社員が内部告発することで発覚します。または、循環取引に(それとは知らずに)関わっている社員が気づくことで発覚します。
- 納税資金の限界
循環取引においては、納税(法人税や消費税)によりキャッシュの社外流出が発生します。そのため、納税資金が底をついたら発覚します。 - 相手方の倒産
相手方が必要な取引であるため、一方が倒産した場合は、債権者にすべてが明らかになります。
循環取引の罰則やリスク
循環取引は不正会計であり、循環取引を行った決算書による信用力を利用して、金融機関からの資金調達などをした場合は詐欺罪などに問われる可能性があります。