ほとんどの中小企業が一度はお世話になるであろう信用保証協会について解説します。
信用保証協会とは
信用保証協会は、中小企業や小規模事業者が金融機関から融資を受けやすくするための公的な支援機関です。
融資を希望する企業が十分な信用力を持たない場合、信用保証協会が保証人となることで金融機関に対するリスクを軽減し、資金調達を円滑にします。各都道府県に設置されており、地域の中小企業を支援しています。
金融機関から融資を受ける後ろ盾
中小企業は、事業実績等が不足していることで、金融機関からみると信用力に不安があることが多く、円滑な融資が難しいケースがあります。
信用保証協会は、金融機関に対して融資の保証人となり、融資が実行されるよう支援します。この仕組みによって、中小企業は必要な運転資金や設備資金を円滑に調達しやすくなります。
保証付融資とプロパー融資
信用保証協会の保証が付く融資(保証付融資)に対して、保証の無い融資をプロパー融資といいます。通常、プロパー融資の方がハードルが高いです。
責任共有制度
責任共有制度とは、信用保証協会と金融機関が融資に伴うリスクを分担する仕組みです。通常、協会が80%を保証し、残りの20%は金融機関が負担します。
責任共有制度は、2007年(平成19年)10月に導入されました。それ以前は、信用保証協会が融資額の100%を保証する「全額保証方式」が主流でした。この方式では金融機関にとってリスクがほとんどなく、保証付き融資が安易に行われる傾向が指摘されていました。
どのような保証制度があるか
信用保証協会は、以下のような多様な保証制度を提供しています:
- 長期経営資金保証:長期の事業資金に対する保証
- 借換保証:既存借入金を借り換えまたは一本化することで資金繰りを安定させるための保証
- 危機関連保証:大規模な経済危機や災害等により影響を受けた中小企業者の資金繰り支援のための保証
信用保証料
信用保証協会のサービスを利用する場合、企業は信用保証料を支払う必要があります。
保証料率は、企業の財務状況や保証制度の種類に応じて決定されます。一部の制度では、行政の補助により保証料が軽減される場合もあります。
具体的な保証料については、以下のようにシミュレーションツールも提供されていますので、ご活用ください。
行政との連携による制度融資
信用保証協会は、地方自治体と連携し「制度融資」を提供しています。
これは、自治体が利子補給や保証料補助を行うことで、中小企業が低利で資金調達できる仕組みです。地域ごとに異なるプログラムが展開されており、地元企業の経営を強力に支援します。
制度融資の例
※多くの自治体で制度融資の取組があります。「◯◯県 制度融資」や「◯◯市 制度融資」で検索してみてください
信用保証協会は経営支援もしてくれる
信用保証協会は、単に保証を提供するだけでなく、経営支援にも力を入れています。資金調達後の企業が持続的に成長できるよう、多岐にわたるサービスを展開しています。
専門家派遣
中小企業が抱える課題に応じて、経営改善や事業戦略の策定をサポートする専門家を派遣します。これにより、企業は経営上の課題を解決しやすくなり、より競争力のある事業展開が可能になります。
セミナー・講座
信用保証協会は、経営者や従業員向けにさまざまなセミナーや講座を開催しています。テーマは財務管理、マーケティング、労務管理など多岐にわたり、実務に役立つスキルを学ぶ機会を提供しています。
信用保証協会を活用するには
たまに信用保証協会から直接融資してもらえると思っている方がいますが、信用保証協会が直接融資を実行するわけではありません。
信用保証協会の保証制度を利用するには、金融機関を通じて申し込む必要があります。
信用保証協会の保証を利用する流れについては以下の通りです。
金融機関を通じて保証付融資を申し込む流れ
- 金融機関での融資相談がスタート
中小企業や小規模事業者が融資を希望する際、取引のある銀行や信用金庫などの金融機関に相談します。そこで融資の目的や必要額、企業の財務状況などが審査されます。 - 信用保証協会への保証依頼
金融機関は、借り手が信用力不足などの理由で通常の融資が難しいと判断した場合、信用保証協会に対して保証の申請を行います。このとき、借り手は金融機関を通じて保証制度の利用申込書を提出します。 - 信用保証協会の審査
信用保証協会は、企業の財務状況や返済能力、事業の将来性などを独自に審査します。保証が承認されると、金融機関に通知が行きます。 - 融資の実行
信用保証協会の保証が付いた融資として、金融機関が資金を貸し付けます。以降、企業は金融機関に対して通常通り返済を行います。
信用保証の限界:保証枠は全ての金融機関分の合算
信用保証は心強い枠組みではありますが、限界もあります。個社に用意される信用保証金額は、制度の枠を上限として、その範囲内で信用保証協会の個別の審査により決まっています。
また、その枠は、全ての金融機関で共有する合算枠となるため、A銀行で保証枠が一杯であれば、B銀行でも一杯ということになります。
例:信用保証協会の上限枠が3,000万円の場合(数字は先着順)
- A銀行で1,500万円
- B銀行で2,000万円
- C銀行で500万円
という申込みをしても、A銀行の保証審査が1,500万円分認可になり、その後B銀行での保証審査は減額されて1,500万円の認可となります。また、C銀行分は認可となりません。※保証審査の進捗状況によっては、A・B・C銀行で3,000万円の枠を按分となる可能性もあります。