いざ私的整理を検討するとなっても、私的整理手続にはどのような種類があり、特徴や選定基準が分からなくて一歩踏み出せない場合もあるかもしれません。
ここでは、私的整理手続について網羅的にまとめました。
私的整理の種類と特徴
私的整理には、以下の種類があります。それぞれ、債務者(企業)の規模や利用のしやすさに違いがあるため、事業再生を専門とする弁護士の助言を得て適切な手続を選択することが望ましいです。
1. 準則型私的整理
準則型私的整理は、あらかじめ定められた手続規定(準則)に従って進められる私的整理です。一般に「私的整理」という場合は、この準則型私的整理を指しています。以下に代表的な種類を挙げます。
(1) 事業再生ADR
上場企業などの大規模企業向けの私的整理手続で、裁判外紛争解決手続の一種です(裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律及び産業競争力強化法に手続きの概要が定められています)。法務大臣の認可を受けた「事業再生実務家協会」が実施し、第三者専門家(弁護士、公認会計士など)の助言を受けながら慎重に進めます。費用は他の手続より高額ですが、金融機関にとっては安心して利用できる特徴があります。
(2) 中小企業活性化協議会
中小企業を対象にした制度で、地域の商工会議所等に設置されています。費用負担が軽減される補助制度が利用可能で、事業改善策の構築やリスケジュール支援を行います。
参考:中小企業庁「中小企業活性化協議会(収益力改善・再生支援・再チャレンジ支援)」
(3) 中小企業版私的整理ガイドライン
全国銀行協会が策定したガイドラインで、第三者機関が存在しない代わりに弁護士等が第三者支援専門家として関与します。手続の公正性が保たれる仕組みです。
参考:全国銀行協会「「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」の策定について(中小企業の事業再生等に関する研究会)」
(4) 特定調停手続
簡易裁判所で実施される調停手続です。小規模事業者が対象となることが多く、弁護士が主導して金融機関との調整を進めます。
(5) 地域経済活性化支援機構(REVIC)
地域の中堅・中小企業の経営基盤を改善するための支援を行います。最近では、新型コロナウイルスの影響を受けた企業への再生支援にも対応しています。
参考:地域経済活性化支援機構「3分でわかるREVICガイド」
2. 純粋私的整理
準則がない場合でも、債権者と債務者が協議により再建方法を決定する手続です。小規模事業者向けに弁護士が主導して協議を進めることが多く、コストを抑えられる点が特徴です。
3. 第二会社方式
債務者企業が新会社を設立し、その会社に事業すべてを譲渡することで金融負債のない新会社で、事業を再出発させる方法です。この手続により、実質的に債務免除と同様の効果が得られます。
事業譲渡においては適正な代金が新会社から債務者会社に支払われる必要があります。とはいえ、新会社にはそのような資力はないため、融資を受けるか、スポンサーから金融支援を受ける、または事業収益から分割で返済することになります。
金融機関においては、上記事業譲渡対価が、その時点の事業価値として妥当性があるか等をチェックします。もともとの債務者会社は譲渡が終わったら清算します。