余裕資金は月商の何ヶ月分必要?業種別の目安を解説

企業経営における余裕資金(運転資金やキャッシュリザーブ)は、業種や経営状況によって異なりますが、一般的な目安としては以下のように言われています:

余裕資金の基本的な考え方

必要な余裕資金(月商に対する割合)は業種や事業規模、経済環境によって異なりますが、以下の3段階で考えることが一般的です。

①これ以下は危険な余裕資金の水準1~2ヶ月未満

  • 理由: 緊急時の対応力が不足し、売上減少や突発的な支出(修繕費、取引先の倒産など)が発生すると資金ショートを起こす可能性が高いです。
    • 例: 急な売上減少や季節的な繁閑差に対応できず、資金繰りが困難になる。

②通常必要とされる余裕資金の水準3~4ヶ月分

  • 理由: 短期的な収益変動や予期せぬ支出に対応可能で、企業の安定的な運営を支える水準です。
    • 例:
      • 売上減少や取引先からの支払い遅延が一時的に発生しても対応できる。
      • 在庫の仕入れや固定費(人件費、家賃など)を安定して支払える。

③より安全な余裕資金の水準6ヶ月分以上

  • 理由: 景気変動や突発的な危機(リーマンショック級の不況やパンデミック)でも、長期間にわたって事業継続が可能。
    • 例:
      • 大口取引先の倒産や景気後退時に売上が半減しても耐えられる。
      • 事業転換や新規投資に余裕をもって取り組める。

具体的な考慮ポイント

  1. 業種による違い
    • 収益が安定している業種(サブスクリプション型のサービス業)では2~3ヶ月分でも運営可能。
    • 収益が変動しやすい業種(建設業、小売業)は6ヶ月以上が望ましい。
  2. 事業規模と成長フェーズ
    • 成長中の企業:投資に資金を回すため、余裕資金は最低限(1~3ヶ月分)。
    • 安定した企業:リスク対応を優先し、より多く(6ヶ月以上)を確保。
  3. 経済環境や市場リスク
    • 不況期や予測が難しい市場では、通常より多く確保する必要があります。

業種(業態)別の目安水準

以下に具体的な業種(業態)ごとの目安水準をご紹介します。

業態 ①危険水準(月商) ②通常水準(月商) ③安全水準(月商) 理由
コンビニエンスストア 1ヶ月分 2ヶ月分 4ヶ月分 仕入れや固定費の支払いが滞ると即座に影響
スーパー 1ヶ月分 3ヶ月分 6ヶ月分 大量仕入れや在庫の変動に対応
食品卸 1ヶ月分 3ヶ月分 6ヶ月分 取引先の支払い遅延や在庫リスク
洋食レストラン 1ヶ月分 3ヶ月分 6ヶ月分 食材ロスや予約キャンセル対応
ラーメン店 1ヶ月分 2ヶ月分 4ヶ月分 繁閑差や原価率の影響に対応
フィットネスジム 1ヶ月分 3ヶ月分 6ヶ月分 会員減少時の固定費カバー
ビジネスホテル 2ヶ月分 4ヶ月分 6ヶ月分 稼働率低下やキャンセルに備える
民泊 2ヶ月分 4ヶ月分 8ヶ月分 需要変動や災害リスク
金型製造業 1ヶ月分 3ヶ月分 6ヶ月分 受注減少や設備費に備える
生活雑貨製造業 1ヶ月分 3ヶ月分 6ヶ月分 需要低下や原材料費変動に対応
電気工事業 1ヶ月分 3ヶ月分 6ヶ月分 案件の遅延や需要変動への対応
ゼネコン 2ヶ月分 4ヶ月分 8ヶ月分 大型プロジェクト遅延や経済変動
ソフトウェア受託開発業 1ヶ月分 3ヶ月分 6ヶ月分 プロジェクト終了や支払い遅延に対応
SaaS 1ヶ月分 3ヶ月分 6ヶ月分 顧客解約や景気変動に対応
学習塾 1ヶ月分 3ヶ月分 6ヶ月分 季節変動や生徒数減少に備える
内科クリニック 2ヶ月分 4ヶ月分 6ヶ月分 診療数減少や設備投資の余地
美容クリニック 2ヶ月分 4ヶ月分 6ヶ月分 景気低迷や患者数変動に対応
美容室 1ヶ月分 2ヶ月分 4ヶ月分 客足減少時に備える
ネイルサロン 1ヶ月分 2ヶ月分 4ヶ月分 顧客減少や景気変動リスク
危険物運輸業 1ヶ月分 3ヶ月分 6ヶ月分 燃料費高騰や需要減少
タクシー 1ヶ月分 2ヶ月分 4ヶ月分 需要減少や車両維持費に対応
SNS広告代理業 1ヶ月分 3ヶ月分 6ヶ月分 クライアント数減少や受注停滞
イベント企画 1ヶ月分 3ヶ月分 6ヶ月分 イベント中止や季節変動
不動産賃貸業 1ヶ月分 3ヶ月分 6ヶ月分 空室率上昇や賃料減少に対応
不動産仲介業 1ヶ月分 3ヶ月分 6ヶ月分 取引減少や不況期に備える
不動産デベロッパー 2ヶ月分 4ヶ月分 8ヶ月分 景気低迷や大型プロジェクトのリスク
税理士事務所 1ヶ月分 3ヶ月分 6ヶ月分 クライアント数減少時に備える
弁護士事務所 1ヶ月分 3ヶ月分 6ヶ月分 需要減少や裁判案件の変動
ライブハウス 1ヶ月分 3ヶ月分 6ヶ月分 来場者数減少や競合増加リスク
セレクトショップ 1ヶ月分 3ヶ月分 6ヶ月分 在庫ロスや消費低迷リスク
輸入雑貨店 1ヶ月分 3ヶ月分 6ヶ月分 輸入コスト上昇や需要変動に対応
資金繰り.com編集部

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